ロマン的な地名を山歩き

秋晴れの中ロマン的な地名の場所を八ヶ岳・蓼科・白樺・車山・霧ヶ峰高原の大自然を満喫しながら散策へと出かけます。

出逢いの辻・五辻
メルヘン街道の麦草ヒュッテから茶臼山へ火山岩の登山道を進み旧大石峠の標識を左に折れ一面黄色を敷き詰めたオトギリソウの草原を狭霧苑からピラタスロープウエイへの歩道にぶつかるまで大自然の中を歩きます。この場所を出逢いの辻(交差路)といいます。偶然に出会いがしらに登山者同士が出会った所なのでしょう。何か若者たちのロマン的な出会いの場を想像します。辻とは今でいう交差点のことです。時代劇でいう辻斬りとは街角の強盗という意味です。山野の草原に自生するこのオトギリソウは薬草の秘薬なのです。この薬草を見つけた兄弟は二人だけの秘密にしていたが弟が他人に漏らしたのを兄が怒り弟を切り殺してしまったのです。そこから弟切草(オトギリソウ)といわれます。出逢いの辻をピラタス方面に足を運ぶとシラビソ林の鬱蒼たる針葉樹林帯の中に東屋が目に入ります。登山ブームの当時は縞枯山からの登り下りの道と狭霧苑からピラタス方面などへの五差路になって五辻と呼ばれこの東屋で一休みの憩いの場所だったのですが今は三差路だけになっています。

おしどり隠しの滝・乙女滝
出逢いの辻から戻りメルヘン街道から渋川の流れ下る横谷渓谷へ入ります。横谷渓谷には趣が異なる滝がいくつも連続する渋川の幽谷を歩きます。苔が密生する岩盤の表面を流れ落ちている優しい名前の「おしどり隠しの滝」を初め「霜降りの滝」など多様な滝があり最後には「乙女滝」。名前は優しいがビレッジの中を流れる大河原堰がこの渋川に落ち込み空中を弾き落ちる様子は名前とは裏腹に壮大な景色を造りだしています。

女の神山
ビレッジの滝見平の横谷渓谷から蓼科湖を通り滝の湯川沿いを上り詰めビーナスラインに出てすずらん峠を目指します。すずらん峠には蓼科山登山コースが目の前に伸びています。この登山口の広場の一角に女乃神茶屋がありここで登山の装備を点検し一休みします。蓼科山は別名諏訪富士とも女の神山(めのかみ山)とも呼ばれていました。この登山口の山小屋茶屋は女の神山に因んで女乃神茶屋と命名されたのでしょう。現在呼ばれている蓼科山も良いけれど女の神山という名前もやさしさがあって癒されます。明治期の歌人であり「野菊の墓」の小説家でもある伊藤佐千夫も女の神山と呼びこよなく愛していたのです。ところで蓼科山は八ヶ岳連峰の北の端に位置していますが八ヶ岳連山ではなく単独の独立峰なのです。形成はコニーデ型火山の上にトロイデ型の火山が載っている山なのです。つまり蓼科山は二度の噴火により現在の形になったのです。当時火山期の激しさが分かる気がします。

女神湖
蓼科山(女の神山)を美しく湖面に映し出す湖が女神湖です。白樺高原のシンボルとしてのこの湖は大自然に恵まれまれ森閑とした静かな林に囲まれ名前の如く女神が存在するような所です。四季を通して早春のザゼンソウ、初夏のレンゲつつじ、秋の紅葉、冬の白銀の世界へと女神に誘われて多くの若者たちが訪れる観光のスポットです。この女神湖は蓼科山火山の火山湖と思っていたのですが実は人造湖で立科町への貴重な水源になっているのです。

ビーナスライン
女乃神茶屋の前の観光道路ビーナスラインは蓼科高原から美ヶ原高原までの全長76kmを走り日本のなかでも絶景の景観を誇る有数の山岳観光ドライブルートです。その移り行く見事な景色を楽しみながら車山・霧ヶ峰高原へと進みます。このビーナスラインもやさしい名前です。このビーナスラインはギリシャ神話の美の女神(ビーナス)の名前から由来されているとのこと。緩やかなラインが草原の中を走り抜けていく様子はまさにビーナスラインと呼ばれる所以です。2IN1スキー場にビーナスラインの女神が佇み微笑んでいましたので写真を撮らせてもらいました。

約束の丘
白樺湖を左に見てビーナスラインを車山・霧ヶ峰高原方面へと進みます。ビーナスラインの中間辺りにある車山肩からコロボックルヒュッテの横を通り車山湿原の真ん中の木道を夫婦岩のある車山乗越へと目指します。左折の蝶々深山へは次回の楽しみにして今日は直進し山彦尾根へ入ります。やがて殿城山(1800m)への分岐点あり右に折れ殿城山を目の前にして進みます。その殿城山への中ほどに緩やかな丘に差し掛かります。この丘がいわゆる約束の丘です。登山者同士がここでお互いに行き会い山の話などに花を咲かせ、またいつの日かここでめぐり逢いましょうと約束をし合ったのでしょう。そんなところから素敵な名前の丘になったのですね。ここには「約束の丘」という立て看板があったのですが何年かぶりに来たところ残念なことに象徴の看板は朽ちてしまっていました。

忘れじの丘
約束の丘を後に霧ケ峰高原の強清水まで行きます。霧ヶ峰の霧は水蒸気を多く含んだ空気が諏訪湖から吹き上げ諏訪湖より一千メートル上にある霧ヶ峰高原で急激に冷やされた水蒸気が凝結され霧が発生するということです。そんな濃霧の日には鐘を鳴らしてハイカーたちに場所を知らせる避難塔が強清水の忘れじの丘に建っている霧鐘塔なのです。ここから見渡す限り開けた草原が霧ヶ峰のグライダーの飛行場になっています。青空に澄み渡ったグライダー場に沿ってのハイキング道をさらに南へと歩き続けます。

池のくるみ(踊場湿原)
車山・霧ヶ峰高原一帯は八ヶ岳火山より以前に噴火した火山地帯だったのです。長い年数が経ち風化が進みなだらかな丘上になっているため一見しただけでは火山の山だったとは分かりません。かろうじて車山の南側の断崖に爆裂火口の痕跡がみられる程度です。その車山・霧ヶ峰火山の風化により火山灰土が泥炭状となり特に湿地帯では他にはない貴重な植物群生地になっています。
先ほどの霧鐘塔の忘れじの丘からようやく目的地の池のくるみ(踊場湿原)に辿り着きます。池のくるみという可愛い名前の湿原には低層・高層の二つに湿原植物が自生しています。高層部の泥炭層は三千年をかけて堆積したのがやっと2,3mとのことです。ここにはスゲの根が泥炭状になって持ち上がり谷地坊主(ヤチボウズ)という現象もみられます。

蓼科高原から白樺高原経由の車山・霧ヶ峰高原のロマン的な優しい地名の場所を秋空にぽっかりとのんびり浮かんだ白い綿雲を眺めながらのウオーキングは日々の慌ただしさを忘れさせてくれた大自然に感謝です。それぞれに特色のある素晴らしいネーミングの場所の山歩きは貴重な体験をすることができ明日に繋がる山旅の一日となりました。(高)

実り始め

皆様、残暑お見舞い申し上げます。
秋口に入りましたが、まだ気温の高い日が続いています。
しかし、徐々にですが、秋らしさを感じられる光景が見られます。

栗。山でキノコと並ぶ代表的な秋の味覚です。まだイガが青いですが、段々と育ち茶色に変色したころ、艶やかな栗の実が見られます。

次はクルミです。果実が生り後は落ちるのを待つばかり。この間、リスが房ごとクルミをを咥えて運んでいました。

最後にヤマブドウです。こちらは既に色づき、ほぼ熟している状態です。

今回は3種類のみでしたが、他にも沢山の植物が秋に向けての準備を始めています。