先日、映画「鹿の国」を観てきました。
諏訪地域に根付く信仰と鹿の関係について描かれたドキュメンタリーです。
ご近所の方が劇中の衣装を用意したと聞き、両親も興味を持ったらしく共に行くことになりました。私たちが鑑賞した日は小雪舞う平日の昼間でしたが、公開1週目だったこともあり、かなりの入りでした。
始まりは諏訪地方の豊かな自然をバックにナレーターの能登麻美子さんの心地よい声が響きます。「ミシャグジ、サグチ、ミシャグウジ」これは原始より続く自然信仰の精霊の名で地域や時代によって呼び名が違うようです。御社宮司と表されることもあります。この場合は役職を指します。
ドキュメンタリーだけれどファンタジー色の濃い映画なのかなと思いきや、次のカットでは初詣で賑わう諏訪大社上社が映され、参拝者の向こう側には動物愛護団体の抗議の横断幕が。元旦に行われる蛙狩神事に対する抗議に配慮して、神事の形も変わらざるをえないようです。
諏訪大社では年間200を超える神事があり、その中で注目されているのが御頭祭です。かつて大祝(おおほうり)と呼ばれた生き神の少年に75頭もの鹿が捧げられました。古文書には「鹿なくてハ御神事ハすべからず」とあり、神事には鹿が不可欠だったことが伺えます。
監督の弘 理子(ひろ りこ)さんはネパールやチベットで生と死の文化を追ってきた方でこの贄の祭に心が揺れたそうです。四季を通じて神事と稲作と鹿、それを取り巻く人々を描いています。そして、中世に途絶えてしまった「御室神事」の再現に挑みます。
映画の中ではすべての事柄が明らかになっているわけではなく、公式ガイドブックを読んで、理解したこともたくさんありました。その後も地域の伝承を調べてみたり、御室神事が行われたと言われている御室社を訪ねて前宮へ参拝してみたり、本宮まで鎌倉街道を歩いてみたり、神長官守矢資料館を再訪したりと学びの機会を得られました。半世紀以上この地に暮らしていながら知らないこともあり、大変興味深かったです。
余談になりますが、帰路の車内では件のご近所の方が衣装の提供だけでなく重要な役で出演しており、その話題でもちきりでした。
岡谷スカラ座では公開1カ月を過ぎ、上映回数は少なくなっていますが、絶賛上映中です。また、全国でも順次公開しています。詳しくは鹿の国公式サイトへ。